気候変動と戦国時代① 異常気候に見舞われた戦国時代

 戦国時代といえば、これまで、群雄割拠の時代、つまり長期化した内乱、応仁の乱で中央政府ともいうべき足利将軍=室町幕府の弱体化に伴い、各地に勢力を持ち始めた戦国大名たちが競って天下を争った時代であるとされてきた。
そこでは、力のある者が上位の者を倒し、成りあがった戦国大名たちが領土欲と野心のために、他国の侵略を成し遂げるという構図が出来、それが戦国時代とされてきた。
 しかし、近年の研究ではこれに大きな疑問が持たれている。
 それは、近年、戦国時代が多面的に研究され、そこに暮らしていた一般民衆の実態が明らかになってきたり、その時代の気象状況などの解明が行われ、我々の知る従前の戦国時代像が大きく変貌しようとしているからである。
 立教大学名誉教授である藤木久志氏は『飢餓と戦争の戦国を行く』という著書の中で、「戦国時代は二年に一回のわりでかなり慢性的に飢饉と疫病が起きている」と述べられ、戦国時代はいつもどこかで飢饉が起きていた時代であるとされた。
さらに、藤木氏は「「戦国期の戦争はほとんど慢性化した飢饉と疫病のさなかに戦われていた」と指摘し、合戦の時代は同時に飢饉や疫病の時代でもあったことを明らかにされた。
 また、都立大学名誉教授の峰岸純夫氏は『中世災害・戦乱の社会史』の中で戦国時代の気象を「寒冷化の時期=飢饉頻発期」とし、藤木氏はこの気象現象の原因を長雨・水害による冷夏長雨型によるものではないかと分析している。(『飢餓と戦争の戦国を行く』)
まさに、この時代の日本、いや世界は地球的寒冷化という異常気象に覆われており、日本においてもその気候異変により慢性化した飢饉・疫病は全国的な規模で起こっていたのである。
そう考えると、合戦の背景も単に戦国大名の野心と領土欲というだけでは説明がつかないことになる。

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