小早川・脇坂は運命共同体

１４日以前に井伊、本多に起請文を出し、東軍に付くことを決めていた小早川の重臣たちが彼らから事前に脇坂のことを伝えられていたとしたら、松尾山こそは山上の小早川勢と山麓の脇坂勢の両者が一体となって動くことができる唯一の場所であった。
先にも述べたが、敵に向かって攻めて行く順序は山上からではなく、山麓からである。
まず、脇坂が動いて、それに続いて山上の小早川が動く。
これが順序というものである。
南宮山も同様、山麓の吉川や安国寺勢が動かなければ山上の毛利秀元も動けなかった。
『脇坂家伝記』には、「筑前中納言豊臣秀秋と（脇坂）安治・同子淡路守安元、かねてより御同意なれば、御味方に参りける」とあるが、両者の間には事前に細かな打ち合わせがあったことは確実であり、小早川は脇坂と同じ行動を取るために伊藤盛正を無理に追い出して松尾山に入る必要があったのではないかという推測も十分に考えられよう。