武田流築城術を色濃く伝える作手村城塞群

作手村の中で最も色濃く武田氏の築城を伝えているのは何といっても古宮城である。
古宮城は奥平氏の居城亀山城の北、国道三〇一号線沿いにあるこんもりとした比高二十五メートルほどの小山に築かれた城で、南北二〇〇メートル、東西二五〇メートルの堂々たる規模を持つ作手村第一の城である。
その本丸には白鳥神社が鎮座しており、古宮という城の名は、この神社からきているのであろう。
この城の最大の特徴は、その正面、つまり大手の虎口がまさに典型的な武田流の内桝形虎口となっていることである。
この内桝形虎口は武田氏の本拠地躑躅ヶ崎館、そして武田氏最後の城となった甲斐新府城にも見られるもので、武田氏による築城の跡を示しているといえる。
筆者が、この大きな内桝形虎口の前に立って、何気なく上を見上げると、古い巨木の上部から一匹のリスが大きな目をこらしてじっとこちらを見ていた。
恐らく、ここには普段は滅多に人など来ないのであろう。

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