腹痛がもたらしたヒント

長野県松本市の郊外に桐原城という戦国時代の山城の跡がある。
城山の標高は九四八メートルと高いが、山麓からの比高は二〇〇メートルでそう高い山には見えない。
この城は追倉沢と海岸寺沢という二つの沢に挟まれた尾根上に築かれており、山麓は豊かな水に恵まれている。
この追倉沢の水は今も用水として利用されており、樋で引きこんで飲用もできるようになっている。
この城を訪れたのは、五月の連休だったと記憶しているが、その日は蒸し暑かったせいで、筆者は水筒の水を飲み干してしまい、近くに自販機もなかったことから、樋から流れる水を掌に汲んでつい飲んでしまった。
水は冷たく、しかも口あたりもよかったため、がぶがぶと飲んでしまったのだが、実はこれが間違いのもとであった。
というのは、ホテルに帰った途端、激しい腹痛で一晩中のたうちまわるはめになったからである。
よく、水が変わると病気をするというが、まさに筆者のはそれだった。
水というのは不思議なもので、その地方に生まれ育った人が飲んでもなんともないが、よその地域の人が飲むと体を壊すということがある。
それは水には大腸菌や様々な雑菌が含まれているからで、その土地に生まれ毎日その水を飲んでいる人にはその雑菌に対して免疫ができているが、他の土地の人にはそれがないことが一つの原因かもしれない。
ただ、水道水にはそれらの大腸菌や雑菌を殺菌するための塩素が入っているので、全国どこでも水道水を飲んで腹を壊すことはない。
また、雑菌は水を沸かして沸騰させれば、死滅させることができることから、生水でも一度沸騰させれば安全である。
さて、この桐原城、実は江戸時代初期の城跡の図が残っている。それは詳細な描写ではなく、覚書というか模式図のようなものなのであるが、そこには、城跡およびその周辺の様子が克明に描かれている。

タイトルとURLをコピーしました