佐和山に登ったこと②

もう何十年も何の手入れも施されてないと思われる木々は生い茂るにまかせて、山の斜面を覆っていた。
また、その途中には倒木や藪が行く手を塞いでいた。
私は倒木を何本もまたぎ、蜘蛛の巣に悩まされながら、やっとの思いで山の斜面をよじ登った。
しばらく登ると一つの細い道にぶつかった。
だが、それはどうみても正式な登山道とは思えなかった。この山に重機か何かの機械を持ち込んで山を削り、強引に作った臨時の道という感じである。
それでも、とにかくその道に沿って登っていくとやがて尾根に取り付き、その尾根道は頂上まで続いていた。
私は頂上まで一気に登った。
しかし、そこで言葉を失った。
私はそこで何か絶対に見てはいけないものを見てしまったのである。
そのときの感情は、大げさに言えば、あの映画「猿の惑星」のラストシーンでチャールトン・へストン演じる主人公が未知の惑星で、そこにあるはずのない自由の女神の頭部を見てしまったときのいたたまれない感情に似ていた。
「オー・マイ・ガッド!」私はチャールトン・へストンのように思わず地面を叩きたくなった。
なぜなら、この山の山頂にあったはずの安土桃山時代の華麗な城跡が忽然と消え失せていたからである。

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