真田家と六文銭30

『真田御武功記』という書には、海野幸義が戦死したとき幸隆は自らも討死を覚悟していたが、そこに白鳥明神の使いと称する神子が現れて鉾を逆さに持ち、「この鉾を持って敵陣を破り、ここを逃れて時を待ちなさい。そのうち、必ず本望を達するときが来ます。」と言って幸隆に鉾を渡して消えたというエピソードが伝えられている。
ここでは、幸隆が海野氏の守護神である白鳥明神から敵を討つための鉾を授かったことを伝えているが、それはまさに幸隆が敵を討ち、海野家再興の使命を海野氏の守護神から託されたことを表しているとも考えられる。
言葉を換えれば、それはまさに幸隆が海野氏を滅亡に陥らせた村上氏を打倒し、海野家再興の使命を自覚したことを示すエピソードということになろうか
しかし、それは海野対村上の互いの存亡をかけた厳しい戦いであることは間違いなかった。
だが、幸隆が海野氏の復活を目指すかぎり村上氏との戦いは絶対に避けては通ることのできない宿命でもであったろう。
幸隆はその海野再興の運命を託す人物として若き武田信玄に賭けた。

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