命の水を守る水番城

先のブログで述べた長野県松本市の桐原城からほんの数キロ離れたところにある山中に「水番城」という変わった名をもつ山城が存在している。
「水番」とは文字通り、水の番のことで、城は山の沢から出る豊富な水を確保するために、築かれたのであろう。
この沢の水は山下の村々の田畑を潤し、作物を育て、さらには、洗濯や食器等の水洗いなど生活全般を支え、そして何より、命を支える大切な飲料水でもあったはずだ。
もし、ここを敵に抑えられたら、命の源を切られたに等しく、山下の村々は生きてはいけないことになる。
まさに、当時の人々にとって水の確保はそれ自体が合戦であり、城を築いてまでも守らなければならないものであったのだろう。
また、通常、水量が豊富なときは特に争いにはならないが、渇水時は沢の水も水量が減ってくる。そこでは必然的に取水量は通常よりもかなり少なくなることが予想される。まさに命の水が足りなくなるのである。
そうでなくとも、自然な人口の増加に伴って沢の水を使う量はだんだん増えていくことだろう。そうなれば、通常でも水の確保は死活問題で、水をめぐる争いは激しくなり、当時は、血の抗争にまで発展するケースも多々あったことと思われる。
水番城はまさにそんな水をめぐる抗争を背景に築かれた城であったと思われる。
城は水の流れる沢に沿った細い尾根に堀切と小さな郭を配し、その先に番小屋が立つほどの平坦な郭を設けている。
ここでは、山下の村々の人々が交替で刀や弓などの武器を持って番をつとめていたのであろうか。
おそらく、戦国時代は全国にもこのような水を守る城があったと思われるが、今も、「水番城」という名と共にこうして遺構が残っているのは大変に貴重である。

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